闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 誤魔化すことも考えたけれど、櫂人と一緒にいるところを見られるたびに説明しなきゃならなくなるのはかなり面倒。

 それに、コソコソつき合うなんてこともしたくないと思ったから。


「……付き合ってるの」

「は?」

「え? 今なんつったの?」


 聞こえていなかったのか、もしくは聞き間違いだとでも思われたのか。

 二人はもう一度聞いて来る。


「だから付き合ってるの。私、櫂人の彼女になったの!」


 この際だからハッキリと宣言した。

 すると途端に騒がしくなる。


「え⁉ ウソでしょ⁉」

「でも黒王子の名前呼び捨ててたよ⁉」

「マジで? あの怖ぇ先輩の彼女に⁉」


 そんな声が飛び交う中、鋭い目をして睨んできている女子が数人いた。

 金曜日、私の鞄を隠した子たちだ。

 この様子だとまた何かしてくるだろうな。

 分かってはいたけれど、憂鬱な気分になる。

 でも、堂々と櫂人の隣を歩きたい。

 私は心を奮い立たせて、彼女たちの突き刺さるような視線を受け止めた。
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