闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
「眠れる森の美女ならぬ美男子って感じ」

「……だったら、キスで起こしてくれよ」

「っ⁉」


 見ていた唇が突然動いて驚くと、節ばった手が伸びてきて頬に触れた。

 櫂人の手のぬくもりを感じて動けずにいるうちに、グッと体を起き上がらせた彼の顔が近くに来る。


「んっ……」


 ついばむバードキスに声を漏らすと、すぐに声ごと食べるような深いキスが襲う。

 舌が絡めとられて甘噛みされると、脳の奥がジンジンと熱くなってくる。

 熱で思考がマヒしてしまいそうな感覚に、ここがどこなのかも忘れて私は櫂人に溺れた。


「あっ……ふぁ……」


 頬に触れていた手は後頭部に回り込み、私を逃がさない様に掴んでいる。

 そのまま引かれていき、もう片方の腕に抱き締められた。
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