闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
「この黒髪、好きだ」

「っえ⁉」

「サラサラで、触り心地も良くて、昔話に出てくるお姫様みたいだって……初めて会ったときから思ってた」


 優しく、慈しむように手櫛で()かれてゆっくり私の鼓動が早まっていく。


「この髪の一本ですら、他の男に触らせたくない」


 真っ直ぐ私を見下ろしながら、ひと房髪をすくい上げてチュッと唇に触れる。

 優しさと色気が混在している姿に、鼓動は一気に駆け足になった。

 櫂人の節ばった手が今度は私の頬にそっと触れる。


「黒目がちで、白い肌。……ますますお姫様っぽくて、守りたいって思う」

「か、櫂人?」


 いつもより饒舌な彼に戸惑う。

 もしかして分からせてやるって、こうやって言葉と行動で伝えるってことなのかな?
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