闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
「いいから黙って聞いてろよ」

「ぁんっ」


 頬に触れていた手が顎を掴み、唇が塞がれる。

 リップ音を立てて少し離れると、唇の形を確かめるように舌が這う。

 そのまま優しくこじ開けられて、口内に侵入してきた。


「ふぁ……んっ」


 歯列をなぞり、私の舌を絡めとり、すぐに意識が溶かされていく。

 櫂人のキスは、こんな風にすぐに私を蕩けさせるから危険だ。

 でも、危険だけれど心地よくて(あらが)えない。


「っはぁ……可愛い」


 ひとしきり唇を味わって離れて行った櫂人は、私を熱っぽく見下ろして言葉を重ねる。


「俺のキスですぐに(とろ)ける恋華がメチャクチャ可愛い。今日みたいに自分で何とかしようって強がるお前が、俺の前でだけこんなに無防備になるの……すげぇ、クる」

「ふぇ? あっ!」
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