闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
「……さっきのミートソースな、母さんの作るものにそっくりだったんだ」

「え?」

「二年も経って、味なんか忘れてると思ったのに……結構覚えてるもんなんだな」


 だからかな、と櫂人は自嘲気味に笑う。


「母さんのこと、恋華に話すなら今だと思った」

「櫂人のお母さんのこと?」


 失踪した話は前に聞いた。

 それ以外にも何かあるんだろうかと首を傾げる私に、櫂人はちゃんと向き直って告げる。


「茜渚街に潜む殺人鬼……ヴァンピールを作り出している人物がいるって前説明したよな?」

「え? うん」

「大橋さんの話だと、その人物っていうのが母さんかもしれないって言うんだ」

「え⁉」


 想像もしていなかった話にただ驚く。

 それが驚愕というほどのものになる前に、櫂人は言葉を重ねた。
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