闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 大橋さんは、何を言っているの?

 さっき聞かされた自分がヴァンピール一歩手前だという情報より、今目の前で恍惚と語っている男のことの方が受け入れられない。

 だって大橋さんの言葉が本当なら、茜渚街にヴァンピールを解き放っている犯人は彼ということになる。

 しかも、その理由が自分の“唯一”である真理愛さんをおびき出すため……。


「狂ってる……」


 思わず呟くと、語っていた大橋さんはやっとまともに私を見た。


「ああそうさ! 狂おしいほどに求めているんだ。だから手段も選ばない」


 あなたはおかしいと、そんな言葉を聞かせたのにむしろ喜々として肯定する。

 そして、狂いきってしまった昏い瞳は私にただただ恐怖を与えた。
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