闇の総長はあたらよに運命の姫を求める

大橋の思惑

 パチン、と。

 指を鳴らす音が聞こえてハッとする。


 あれ?

 私、何してたんだっけ?


「気付いたかな?」

「っ!」


 ふわふわした意識が男の声で一気に引き上げられた。

 声の主、大橋さんを見て直前の状況を思い出す。

 確か、久島先生と保健室で話をして……私をハンター協会で管理したいからと大橋さんが学校から連れ出して――。


「っ!」


 考えて、目の前の男の狂気も思い出す。

 櫂人のお母さん――真理愛さんを自分の“唯一”だと言い、失踪した彼女をおびき出すために茜渚街へヴァンピールを解き放ったと言っていた。

 まともじゃない。


 そのまともじゃない人に、どこかへ連れて来られた。

 状況を考えるとハンター協会支部ではなさそうだけれど……。
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