闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 今は私の方が体温が高いのか、触れた唇はヒヤリとする。

 でも、すぐに熱は混じり合い同じ温度になった舌が真理愛さんの血の結晶を押し入れてきた。

 舌にその硬いものが触れた途端、私はまるで飢えを満たすようにその結晶を求める。

 今の私に必要なのは、これなんだと体が欲した。


 コクン、と飲み込むと、すぐに私の熱で結晶は溶けだし私自身に広がっていく。

 ヴァンピールになりかけていた私。

 吸血鬼になるために足りなかった、ひとさじ分の吸血鬼の血。

 そのひとさじ分の真理愛さんの血は、この血の結晶が代わりの役目を果たしたんだと分かった。


 そうか、だから真理愛さんは薬だと言ったんだ。


 今まさに私の助けとなった血の結晶。

 真理愛さんがその最後のひとさじを直接入れられない状況のとき、私がヴァンピールになってしまわないよう……吸血鬼になるための最後の手段がこれだったんだ。
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