闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 真理愛さんが自分の“唯一”で、失踪した彼女をおびき出すために茜渚街へヴァンピールを放ったこと。

 他にも彼女を見つけるために色々したが、見つけられなかったこと。

 ひと月前に真理愛さんの血の結晶を見つけ、その場にいた私がヴァンピールのなりかけだと知って真理愛さんが私に血を入れたのだと推測したこと。

 ヴァンピールの特性を生かして、私をヴァンピールにして真理愛さんを見つけようとしたこと。


 それら全てを正当なものとして、まるで悪いと思っていない様子にゾッとした。


「先に真理愛の結晶を飲み込んで隷属しても良かったが、本人がいないんじゃあ意味がない。そう思って取っておいたのが(あだ)になってしまったが……」


 チッと舌打ちしながらもう一度私たちを睨み、一つ息を吐いて気を取り直し久島先生を見る。

 久島先生は、目に見えて青ざめていた。
< 308 / 329 >

この作品をシェア

pagetop