闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 吸血鬼の血が、私の命を確実に繋ぎとめる量を。

 そして報告しなくてもいいように、完全に吸血鬼にならない量を。

 ひと月ごとに血を抜けばヴァンピールにはならないから、多血症ということにして瀉血の処置をしていたんだそうだ。

 ヴァンピールにだけはならない様に、念のため血の結晶を薬として渡して。


「大橋のことが落ち着いたら事情を話して、吸血鬼になるようにと勧めるつもりだったんだけど……」


 まさかこんなことになるなんて、と息を吐いた。

 真理愛さんはこの街からしばらく離れていたから、大橋がヴァンピールを使って自分をおびき出そうとしていたことも、櫂人が荒れて暴走族の総長なんてことをしていることも知らなかったのだそうだ。


「全く、櫂人がグレて家を出てるなんて……あの人はいったい何をしているのかしら」

「グレてって……」


 旦那さん相手に憤慨する真理愛さん。

 流石の櫂人も母親には勝てないのか少しタジタジになっていたな。


 そんなことを思い出しているうちに、私たちは櫂人の家に帰って来た。
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