闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 これは平安時代からある貝合わせという遊びの道具。

 初めは珍しさや美しさを競う遊びだったらしいけれど、ハマグリみたいな二枚貝は対となる貝殻としか組み合わせることができないことを利用して、江戸時代頃には神経衰弱みたいな遊びになったんだとか。

 私の手元にあるのはその一つの片割れ。

 対となる貝殻はまた会おうと約束した男の子が持っているはずだ。


 あれは、私がまだ五歳の頃。

 両親と一緒にどこかの海に遊びに行って、はしゃぎ過ぎた私は両親とはぐれた上にケガをして岩場で泣いていた。

 そこにその男の子が現れたんだ。


『おひめさま、どうしてないてるの?』


 お姫様なんて呼ばれたのは初めてだったから、ビックリしたのを覚えている。
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