闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 つまり、昼休み中に私の鞄を持ち出してそのクラスメートが午後の授業中に茜渚街へ隠しに行ったということか。

 あまりのことに絶句する。

 ただでは返してくれないだろうと思っていたけれど、まさか校外にまで出て隠してくるなんて……。

 流石に想像もしていなかった。


「あなたならすぐ見つけられるでしょ? 黒王子のお気に入りなんだもの」

「そうそう。助けてって泣きつけばいいんじゃない?」


 笑いながら言う様子に、彼女たちは全部分かっていてこんなことをしたんだって分かる。

 私が櫂人先輩に泣きつくなんて出来ないって分かってるんだ。

 事実、櫂人先輩とは昨日の朝会ったっきりだし連絡先だって知らない。

 助けてと伝える(すべ)すら私は持っていないんだ。
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