闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
「それとも他の男に泣きつく? 得意なんでしょう? 昨日だってキヨトたちと一緒に帰っていたし」

「それは、ただ話を聞きたくて……」

「そんなの知らないわよ。何にしたってあなたが男をたらし込んでるのは事実じゃない」


 ちゃんと理由を言っても聞き入れてくれない。

 彼女たちの中では私は誰彼構わず男をたらし込む、気に入らない女ってことになっているんだろうか。


「ほら、早く行きなさいよ。暗くなる前に見つけ出さないと、噂の殺人鬼が出て来ちゃうかもしれないわよ?」

「っ!」


 その噂のこともちゃんと分かっていて茜渚街に隠して来たなんて。

 (たち)が悪すぎる。

 せめて一言だけでも文句を言いたかったけれど、その時間すら惜しかった。
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