闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 つまりは親切心というより自分の罪悪感を薄めるためにヒントをくれるってことか。

 モヤモヤしてそのメモを突っぱねたい気もするけれど、なんのヒントもなく探すのは無茶すぎる。

 私は怒鳴りたい気持ちを抑えてメモを受け取った。


「お礼は言わないから」


 と、ひと言だけ告げて私は校舎を出る。

 お礼は言わないというより言えない。

 悪いと思っているなら、はじめからこんなことしなきゃいいんだから。

 怒りとか、焦りとか、色んな感情が渦巻く。

 心の支えである貝殻がないことで、不安が胸に広がる。


 早く、早く見つけなきゃ。

 今はまだ、あれがないと心を保っていられない。

 寄り添って支えてくれる真人さんも、今日は帰って来ないんだから。


 私はもつれそうになる足を叱咤(しった)し、初めて(おもむ)く場所・茜渚街へと急いだ。
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