闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 気付かれた!

 そう判断した瞬間、私は走り出す。

 さっきまでまともに考えることすら出来なかったのに、いざ危険に直面した途端ただ生きるための方法を選択した。

 《あれ》が何なのかとか、血を流していた人を助けなくちゃとか。

 他の考えが全て消えて、逃げることだけを考える。

 きっと、これが本能というものだろう。


 でも、やっとのことで比較的明るい大通りに出られたと思ったら――。

 グイッ

 腕を掴まれ引き戻されてしまった。


「っきゃあ!」


 引かれる勢いのまま投げられ、私は地面に叩きつけられる。

 アスファルトにこすられてかなり痛かったけれど、今はその痛みに耐える時間すら惜しかった。
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