闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
「うっうう……」


 足元からうめき声が聞こえてハッとする。

 さっき、目の前の《あれ》に襲われて血を吸われていた女性だ。

 暗くてよく見えなかったけれど、まだ生きているのは確か。

 生きているなら、助けたい。

 でもこの状態で私が彼女を連れて行くことは無理だから、やっぱり何とかして逃げ切って助けを呼んでこないと。


 目の前にいる人の形をしたモノは、口元を血で汚したままゆっくり近付いてきた。

 その様子はやっぱり人というより獣の様で、言葉が通じるとは思えない。

 とにかくこれ以上近付かれない様にして、なんとか向こう側に行かないと……。

 とんだ無理ゲー状態だけれど、だからって諦めることは出来ない。

 私と、襲われていた女性の命がかかっているんだから。
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