闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 何とか隙を作って《あれ》の横を通り抜けるしかない。

 そう判断した私は近くにあるビールケースを掴み投げつけた。

 ガンッ

 大して飛ばせなくて当たることもなくアスファルトに落ちたけれど、近付く邪魔にはなっているみたい。

 他に出来ることも無かったから、私はまたビールケースを投げつけた。

 今度は腕に当たったけれど、それで怒りを買ってしまったのかもしれない。

 ギロリと睨まれてしまう。


 マズイ!


 瞬時に危険を感じ取って、また投げつけようとビールケースがある辺りを探ったときだった。


 っ! これは……!


「があぁ!」


 怒りか苛立ちか。

 わずらわしそうに唸り声を上げた《それ》が素早い動きで近付いてきた。
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