闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
「申し訳ないが、君にも来てもらうよ。忘れてもらわなくてはならないからね」

「え?」

「なに、痛いことはしない。君も怖い記憶なんて持っていたくないだろう?」


 優しく語りかけてくれるけれど、記憶を消されるなんて嫌だ。

 確かにヴァンピールのことは怖かったけれど、櫂人先輩との記憶は一つたりとも消したくない。

 さあ、と誘う大橋さんから身を引く。

 そして嫌です、と口にしようとしたけれど、その前に櫂人先輩が割って入って来た。

 私を守るように背にかばってくれる。


「悪いけど、こいつのことは俺に任せてもらえませんか?」

「櫂人くん、そういうわけには――」

「こいつは俺の“唯一”なんで」

「っ⁉」


 櫂人先輩の一言に、大橋さんは驚き言葉を詰まらせる。
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