闇の総長はあたらよに運命の姫を求める
 “唯一”って、何?

 なんだか特別な響きを持つ言葉だけれど、もっと深い意味がありそうだと感じた。


「“唯一”……珍しいな。でもそうか、なら手出しするわけにはいかないな。分かった、でもちゃんと説明と口止めはしておいてくれ」

「分かってますよ」


 あっさりと大橋さんが引き下がるところを見ても、言葉以上の意味を持つんだろうって分かる。


「じゃあ、悪いけどここは任せます。……恋華、とりあえずついてこい」

「え? あ、はい」


 状況が良く分からないけれど、大橋さんについて行かなくてもよくなったらしい。

 櫂人先輩は私の返事を聞くと手を掴み、引いて歩き出した。


「っ!」


 男らしい硬い手の感触にドキリとする。

 その力強さに、どうしてか鼓動が早まった。
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