初恋の記憶〜専務、そろそろその溺愛をやめてくださいっ!〜
「っ、専務からだ!ごめん、ちょっと出てくるね」
言うなりわたしは素早く席を外した。
「…あの子、新卒なのにいきなり専務専属の秘書に抜擢(ばってき)されたんだったわよね…?」
「…普通そんなことあり得ないわよねぇ」
「ねぇ、確かその専務の名前って『かがみ』って言ったわよね…?」
「…もしかして?」
「もしかするかも…!?」
「「キャアーッ!!!」」
友人たちの興奮MAXの叫び声がカフェ中に響き渡ったのなんて気にもせずに通話の表示を素早くスライドさせ、耳に当てる。
「もしもし、専務ですかっ?どうかされましたか?」
『ふっ、君はいつも元気だな』
柔らかく低い声が耳に心地良い。
ほわんっとしていたら
『聞いているか?井上くん』
「えっ!?あ、すみません!専務のお声があまりにも心地良くて」
『全く君って子は…。今日このあと時間あるか?月曜の会議のことで事前に打ち合わせしておきたいんだ』
「あ、はい、大丈夫です!何時にどちらへ向かえばいいでしょうか?」
『いま君は出先か?』
「はい、最寄駅の近くのカフェにいます」
『では今から迎えに行く』