初恋の記憶〜専務、そろそろその溺愛をやめてくださいっ!〜
そんなわたしの意に反して専務は行きつけだと言う小料理屋で、これも美味しいから食べろ、あれも絶品だから食べろと、説教どころかとても優しくしてくれた。
そんな専務の優しさが心に痛くて、菜の花の辛子和えを食べながら号泣してしまった。
食べながらボロボロ泣くわたしに専務は高級そうなブルーのハンカチを差し出してくれて、
「食べるか泣くか、どちらかにしなさい」
と、優しく微笑んだ。
泣くだけ泣いて、弱音を吐くだけ吐いたわたしに専務は、
「わたしが君に覚えてもらいたいことや、君が吐きたい愚痴は、時々こうして夕飯を食べながら話し合おう。そうしよう」
と言って、まるでなぞなぞクイズの正解を思い付いた子供のようにその瞳をキラキラさせた。
ーーそれ以来、わたしはこうして専務と夕飯を食べに行くのがすっかり習慣と化してしまっているのだけれど…。
最近はなんていうか、誘ってくる頻度が高くなっている気がする…。