初恋の記憶〜専務、そろそろその溺愛をやめてくださいっ!〜

「じゃあなんでこんな親身になってくれるんですか?」

ただ飴だけを与えている専務の意図が全く解らない。

「ーー気付け、バカ」

「え?すいません、専務、今なんてーー」

「ほら、着いたぞ」

専務が何て呟いたのかわからないまま、車を降りると目の前にそれはそれは高級そうな割烹料理屋が建っていた。

だからと言って今更臆する事もないのだが、やはり気になるのは自分のこの服装だった。

「専務。いくら貸し切りとはいえ、わたしの格好はカジュアル過ぎる気がするのですが…」

今日はオフの日だったので、Tシャツにキャミワンピ。髪は緩めのポニーテール。足元においてはスポサンと言う割烹料理屋には120%不似合いな服装なのだ。

対して専務はというと、白のインナーの上にダークグレーのジャケットをサラリと羽織り、ジャケットと同色のアンクル丈のテーパードパンツ、足元は革靴と、わりとシーンを選ばない格好をしている。

ずるい。

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