初恋の記憶〜専務、そろそろその溺愛をやめてくださいっ!〜
「かっ、かがみ…さん、」
「なんだ?」
「ちがっ…、わたしの、好きな人っ、」
息も絶え絶えに言えば、専務の動きがピタリと止まった。
今が逃げるチャンスなのに、もうちっとも体に力が入らない。
「…、かがみ。名は?」
「わ、すれた…っ」
「忘れた…?好きな男の名をか?」
別に責められるような言い方はされていない。
それなのに急に堰(せき)を切ったように涙がボロボロと溢れて止まらなくなった。
「みなっ、」
「好きだっただけっ!なのに何でっ!」
「みなみ、落ち着け。悪かった、こんなことして…」
「っ、奪えばいいじゃないっ!誰にも抱かれた事のない身体よ!?好きなだけ抱けば!?」
「みなみ、」
「好きだったっ!かがみさんのことも、専務のことも!でもあれは嘘だって、本気じゃないって何度も自分に言い聞かせて…っ。独りになる度、叔母さんになじられる度、いつも助けを求めたけれど、誰も来てくれなかったっ!ずっとひとり、だったっ」
もう自分が何を言っているのかわからなかった。
ただ感情のままに言葉が暴走した。
「夢だったウェブデザイナーにもなれなくて、でも何でか専務の専属の秘書にならないかって誘いがあって。こんなわたしでも必要としてくれる人がいるんだって、嬉しくてっ。だから、なのに…っ!」