初恋の記憶〜専務、そろそろその溺愛をやめてくださいっ!〜
どうせ近くのコンビニに行くだけだからと、手櫛(てぐし)で髪をゆるくまとめて、服はノースリーブのマキシ丈ワンピ、足元はウェッジソールのサボで、お財布とスマホ、あと迷ったけれどお守りのカメオも小さなクリアバッグに入れて外に出た。
ヒグラシが鳴く道をてくてく歩く。
ここは実家に近い道だからと、それを避けるように歩(ほ)が速くなる。
実家はもう売りに出していると言うのに…。
母はわたしが成人したのとほぼ同時に再婚し、家を出た。
わたしはわたしで元実家からそう遠くないアパートで気ままなひとり暮らしをしている。
…早く次の仕事見つけなくちゃなぁ。
用事を済ませ、コンビニを後にした時。
何かを感じたわたしは、ハッと空を見上げた。
そこには、
いつかの燃えるような夕陽に染まった空が広がっていたーー…。