初恋の記憶〜専務、そろそろその溺愛をやめてくださいっ!〜
走っているうちに髪が乱れた。息も切れてきたし、汗も全身から吹き出してくる。
それでもわたしは走ることをやめなかった。
しばらくすると、あの公園が見えてきてわたしは漸(ようや)く走る足を止めた。
「ッ、ハッ!ハァッ!ハァッ、ハァ…」
日頃の運動不足が祟って酷い有様(ありさま)だ。
身なりもロクに整えないまま公園の中へと歩みを進める。
走ってきたからなのか、それとも緊張からなのか、心臓がドッドッドッと今にも外に飛び出そうなくらいな勢いで脈打っている。
こころなしか足もプルプルと震え出した。
…しっかりしろ!みなみ!
自分を叱咤(しった)し、前を向いた時、視線の先に男の人が立っているのが見えた。
ドキンっと一際(ひときわ)大きく心臓が跳ねた。
ネイビーのスーツを着た長身の男性。後ろを向いてしまっているが、なんだか自分はこの人の事をよく見知っている気がした。
「ぁ…っ、あのっ、」
勇気を振り絞って声をかけると男性はゆっくりとこちらに振り向いた。
「…え、…どうして、」