初恋の記憶〜専務、そろそろその溺愛をやめてくださいっ!〜
見知っているはずだった。
「専務…」
そこに立っていたのは薔薇の花束を持った各務専務だったのだ。
「3日ぶりだな。心配したぞ」
優しい声に優しい表情。
「…からかいにでも、来たんですか?」
でもわたしは専務への警戒を解かない。
「ははっ、参ったな。すっかり君に嫌われてしまったようだ」
少し辛そうに顔を歪めながら力なく笑う専務と、あの日のかがみさんが重なって見えた。
…まさか。ほんとうに?
「専務が、本当にあのかがみさんなんですか…?」
「…ああ。本当だ」
信じられない。だって、
「だって、専務。この間、かがみさんからわたしを奪うって…」
「それは俺の早とちり。みなみに誰か他に好きなヤツが出来たんだと思って、焦って理性なくした。…怖い思いをさせて本当にすまなかった」
専務はわたしに頭を下げて謝罪した。