100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
「実はティアナ様は昨夜非常に夢見がわるかったようで、起きてからもぼんやりされていたのです。
よほど恐ろしい夢でも見られたのでしょう。
パーティーの準備までまだしばらく時間はありますし、その間ティアナ様はお部屋で身体を休めておいた方がよろしいかと」
斜め後ろに控えていたハーディスが助け船を出してくれ、両親は驚いた顔から一気に心配そうな表情で私を見た。
「確かに顔色が良くないな」
「いつも朝食はしっかり食べるのに進んでいませんね。
あと少し食べられるようなら口にして、その後は部屋でゆっくりしていなさいな」
「ありがとうございます、お父様、お母様」
嘘を隠しているような罪悪感に駆られる。
何だかずっと生贄になっていたような私が、こんな優しい両親の子供であることに申し訳ない気持ちになってきた。
肩に手が置かれそちらを振り向くと、ハーディスが優しい笑みで私に話しかける。
「ティアナ様は多くの人達に愛されているのです。
どんな恐ろしい夢も段々と薄れることでしょう」
「ありがとう」
フォローしてくれたのは嬉しいが、今までのことを忘れてしまうのは良いことなのだろうか。
あんなに幸せな生活を願ったのに、急な温度差に戸惑っているのか自分でもわからない。
ただ16歳になれた。
ようやく進むことの出来る自分の人生を大切にしなければならない。
そう思うと自分の心にカツを入れた。
「そうよね、気持ちを変えなきゃ。
食事はもういいから最後に紅茶を頂くわ」
「かしこまりました」
ハーディスに笑顔を見せ、両親にも笑顔を向ければ二人はホッとしたようにお互いを見ている。
あぁいう両親のような幸せな家庭を私も築きたい。
この101回目の転生で。
私は小花柄のティーカップに注がれる度に広がる良い香りを味わいながら、ハーディスに礼を言おうとして気付いた。