100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
この国は魔法が使える。
正しくは身分の高い者が基本魔法を使えるのだが、その魔法も色々とあり、そして強い弱いももちろんある。
魔法は色で分けられ、目の色と同じ。
一番強い色は、赤・緑・青の三色とされ、その色の一番の使い手が緑の魔法を操るカール。
魔法と言っても攻撃、防御、回復など幅広い。
カールは攻撃は剣の方が強く、魔法は緑で防御力が強い。
どちらも使うことの出来るカールは非常に強い武将でもある。
私の魔法は青。
この国の一番とはされていないが、実際はこの国一の力があることを先ほどのごく一部の人々だけが知っている。
私の魔法の主な力は回復だ。
それも死んでいなければ数百人一気にほぼ全回復させてしまうという魔法。
これはいわば兵器。
これを使えば戦争の有り様が変わってしまう。
多くの兵を特攻させても、死ななければ何度でもまた兵士として戦場に送り出せるのは脅威だ。
この国、アウィン国は今の国王が即位して十数年戦いは無い。
だが周辺国での小競り合いは続いており、もしも私が使う魔法を知られた上で攫われれれば、間違いなく戦争に利用される。
だから私の能力は公にすることが出来ず、一人の簡単な治癒魔法をするだけで体力を奪われるという事になっていた。
私は101回目の転生では幸せに過ごしたいと願った。
だが私の魔法はどう考えても戦争で使用しかねない能力なのは何故なのか。
それを考えるとこの転生した世界でも気が抜けないのではと、100回殺された身としては警戒心が湧いてしまう。
目の前に小さなグラスが差し出され、私はその差し出した相手に顔を向ける。
「少し喉を潤されてはいかがですか」
にこりと微笑むハーディスに何故か酷くホッとした。
彼は今までもこうやって寄り添ってくれた。
両親ですらわからない私の心の機微をすぐに感じ取ってフォローしてくれる。
受け取った飲み物を口にすれば、甘いフルーツジュースが私の気持ちを落ち着かせた。
「いつ見ても良い男だね君は」
「ありがとうございます。
お嬢様に気に入って頂くため、毎日肌の手入れは欠かせません」
思わず飲んでいたジュースでむせた。
ハーディスはキメ顔で訳のわからないこと口走ったが、ヘリオドール公爵は笑っている。
なんなの、この変態執事の発言と行動に対して皆寛容すぎるのでは無いだろうか。