100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる


「ティアナ様、そんなに私を熱く見つめないで下さい。
ご要望とあれば夜伽でも如何様にでも伺いますので今はご辛抱を」

「貴方は少し黙って」

胸に手を当て真面目な顔で言ってきたハーディスを冷めた目で言えば、周囲は楽しそうに笑っている。
うん、幸せで穏やかな世界だけれど何か違うのでは無いだろうか、これ。

その後も祝いを言いに来てくれる出席者に父親、母親と一緒に挨拶をして回り、その後ろをハーディスが護衛のようにピタリとついて回る。

最後は二階に上がるその階段の途中で多くの参加者を前にし、両親と供に私はその横に立つと笑顔を浮かべた。

「今日は私の誕生日に多くの皆様と過ごせたこと、心より感謝いたします。
まだまだ未熟者ですので、皆様のご指導をどうかよろしくお願いいたします」

そういってドレスのスカートを摘まみ頭を下げる。
横にいる両親から、何だか城勤めする騎士の挨拶のようだと苦笑いが聞こえ、確かに子供らしくなかったかも知れないと反省した。

出席者を屋敷の入り口で最後の馬車を見送ったと入れ替わりに、入ってきた馬車が止まる。
そこから降りてきたのはディオンとカールだった。

「ごめん!ティアナ!」

駆け寄ってきたディオンが私を思いきり抱きしめる。
既に客の見送りは済んでいたものの、隣には両親がいるのにお構いなしだ。
しかし幼い頃からこういう距離感なので違和感は無いどころか嬉しい。
強いて言えば私より低かった背は私より高く、体つきも変わったけれど。
ディオンの方が年上なのに未だ可愛く思えたりもして、私もいつも通りその背中に手を回した。

「城から急いで向かおうとしていたら、ちょうどアイオライト家に向かおうとしていたカール侯爵に声をかけて貰って同じ馬車で来られたんだ」

ディオンの後ろには立派な体格で正装をしたカールが真面目な顔つきで立っていた。
ディオンが私から離れると、私の前に跪き流れるように私の手を取ってその甲にキスをする。
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