100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
そんなある日私宛に手紙が届いた。
ディオンからの手紙で私は封を開ける。
そこには街に出かけないかというお誘い。
指定された日は街で一番大きい規模の市が開かれる期間だ。
この国では年に数回城下で大規模な市が開かれ、諸外国からの商人も簡単な手続きで店を出すことが出来る。
旅芸人の一座も来たりするのでとても街が活気づく。
貴族達も出てきて高価な買い物をするし、城の兵などは城下の安全を見回るために出てくるのだが、それは彼らにとってもちょっとした息抜きになっている。
ディオンとは子供の頃から何度もこの市に出かけたものだ。
なのに今回は外に出る気がせず、断ろうかと考えていた。
「いけませんよティアナ様」
暖かい陽の入るテラスの椅子に座り手紙を読んでいた私に、ハーディスがテーブルの上にある紅茶を継ぎ足しながら言う。
「ここのところ思いつめたような顔をしておられます。
外に出かけて気分転換をされてはいかがですか?」
「もしかしてハーディスが気を利かせたの?」
「流石にどちらか一人にだけというわけにはいきませんので、ディオン様、カール様両方にお伝えしてあります」
「ありがとう、といつもなら言うのだけど、ハーディスが誘ってこない事に不信感を覚えるのよね。
あ、二人で出かけるときに執事として付き添うからってのは無しよ」
「いえ、同行は致しません。
お二人ともティアナ様を守れるだけの力のある方です。
少々ディオン様は心許ないですがその辺はご自分でおわかりでしょう。
私はまた改めてにいたします。
悩ませる元凶と一緒に行くのは落ち着かないでしょうし。
それに二人で行けばお嬢様が私を質問攻めにするのは目に見えておりますので」
にっこりと笑顔で言ったハーディスを見て私は眉を寄せる。
まぁ二人になればここぞとばかりに質問攻めにしただろう。