100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる



心遣いが出来ているのか出来ていないのか。
ただ屋敷にいれば始終ハーディスの顔を見ることになるし、そもそも私は結婚に向けて相手を決めなければならない。
そう思うとディオンの申し出は受けるべきだろう。

「わかったわ。
ディオンからのお誘いを受けると返事を書くので後でディオンに届けて」

「かしこまりました」

そう言ってハーディスは胸に手を当て頭を下げた。

白い手袋、スラリとした身体に黒の執事服が実に似合っている。
社交界に出向くときにハーディスが付き添っていれば、他の令嬢から何度も羨ましがられ裏で引き抜こうという動きもあったと父から聞かされた。

実は腕っ節も強く屋敷への不審者も排除したりしているし、当然執事としての能力も高い。

『そんなハーディスが王子なんて考えられない。
幼い頃から執事として努力したからだけなのかしら。
私の相手より王子として過ごす方がきっと贅沢に過ごせるでしょうに』

「そんなに真っ直ぐに私を見ないで下さい。
後でそのティーカップを舐め回しますよ?」

「引き抜きたがった令嬢達もハーディスの本性を知れば一瞬で好意が嫌悪に変わるでしょうに」

私の言葉にハーディスはきょとんと目を丸くした後、柔らかく微笑んで胸に手を当てた。

「何を仰っているのです。私がそういう欲望を抱くのは愛するティアナ様だけ。
ティアナ様以外の心の汚れたメス共など毛ほども興味はありません」

「綺麗な笑顔でゲスの発言したわね」

とりあえず私にだけ仕えたいという気持ちはわかるのだが、愛が重いというか変態過ぎて素直には受け取れずに、喉に詰まった言葉を流すように紅茶を飲んだ。


< 30 / 102 >

この作品をシェア

pagetop