100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
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ガタゴトと車輪が客車の椅子を揺らしながら馬車は砂利道を進む。
目の前にはディオンが座っていて、私の耳には誕生日の日にもらった耳飾りが揺れる度に青い光を車内に輝かせる。
「今日の服はとても可愛らしいね。
僕のあげた耳飾りと似合っている」
お日様のような笑顔でディオンが褒めて私はもう、と言いつつ照れてしまう。
可愛い物、可愛い服は私の外見では似合わないのはわかっている。
もっとふわふわした令嬢なら似合っていただろうが私は違う。
だがディオンは私に可愛い物をプレゼントし続けてくれた。
似合うよ、好きな物を身につけているティアナはとても可愛いよと、金色にも思える瞳を細めて褒めてくれるのだ。
それは私に好きなものを好きでいいと思って良いのだという、当たり前で難しいことを受け入れる力をくれた。
段々と人々の声が聞こえるようになり、石畳の敷かれた広場で馬車は止まった。
ディオンの執事がドアを開け、先にディオンが降りると下で待つディオンが私に手を差し伸べる。
スカートの裾を踏まないようにステップを降りれば、馬車を停める広場ギリギリまで屋台がひしめき合っていた。
賑わう市場を見て思わず嬉しさのあまり頬が緩む。
「はは、ティアナってば今すぐにでも中に駆けだしたそうな顔をしてる」
「仕方が無いわよ、楽しみにしてたんだもの」
「それは僕もそうだよ」
優しく微笑みかけられ、先ほどから握られた手に少しだけ力が入れられる。
「これだけの人混みだ。
興味津々のティアナがどこかにいかないようにしないと」
「小さい頃は私がその役割だったのよ。ディオンも気をつけてね」
む、と言い返すと余裕の笑みで気をつけるよと返ってくる。
「さぁ、楽しもう」
彼の笑みに私も笑顔で答え、賑わう人々の中に入っていった。