100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
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その夜、早速ディオンからもらったプレゼントを枕元に置く。
手のひらに収まるほどの長方形の袋は生地が少々透けるようになっていて、中に入っているものが見える。
紫の花や葉っぱのようなものがぎっしり詰まっていて、顔に近づけるとなんとも落ち着く香に思い切りその香を吸い込む。
「ディオン様からのプレゼントですか」
「えぇ。とても良い香り」
私の就寝の準備をしているハーディスが声をかけてきた。
「ポプリというのですよ。
以前転生された場所で貴女はそれを作られていました」
「そうなの?」
はいと素っ気ない声に私は続きを聞かせて欲しいと言うと、ハーディスは眉を下げる。
「すみません。思い出させるようなことを言うべきではありませんでした」
「どうせその時も16歳まで生きてないんだし、ろくでもない生活してたんでしょ。
だから話してよ。
そしてハーディスはその時どこにいたの?ずっと私を見ていたのでしょう?」
ハーディスは諦めた様にベッド側の灯り以外を消し、手に持っていたキャンドルスタンドを近くのテーブルの上に置く。
そしてベッドで上半身を起こしていた私の側に来て片膝を突いた。
「その時の貴女はまだ小さい兄弟を守る為に、ポプリなどを作っては売っていました。
ですが父親がろくでもない人間で、貴女を奴隷として売ってしまったのです」
「私、兄弟ろくでもないパターンしか覚えていなかったけれど、守りたいと思う兄弟もいたのね」
「えぇ。兄弟達はそれは貴女を慕っていましたよ」
「そんな家族を守る為の生贄として売られたと。
で16歳まで生きてないならろくでもなかったんでしょうね」
私の苦笑いにハーディスは黙ってしまった。
「それを、ハーディスは見ていたのね。
側にいたの?例えば兄弟になっていたとか」
いえ、とハーディスは否定する。
「私はずっと水鏡に映る貴女を見ることしか出来ませんでした。
ですがどの貴女もとても気高かった。
だからこそ、私は貴女に惹かれたのです」
ハーディスの姿が燭台の灯りに照らされ揺らぐ。
そこに見えたのは、腰よりも長い黒髪、見たことの無い異国の服を着た男だった。
驚いてベッドから出ようとすると、大きな手が私の肩を掴む。
見上げると、いつものハーディスが笑顔で私を見ている。
「どうしましたか?」
「・・・・・・何でも無い」
今のは何だったのだろう。
ほんの一瞬だったのに、幻とは思えないほど鮮明に見えた気がした。
「眠れないのならやはりここは私が添い寝を」
「ねぇなんで自分のズボンを脱ごうとするわけ?」
冗談ですよ、今は、という危険なことをいいながら私を寝かしつけ、ベッドサイドの燭台の灯りを消した。
「今日はきっと良い夢が見られますよ。
お休みなさいませ」
「お休み」
ハーディスがドアを閉め、私は目を瞑る。
香ってくるのは初めて嗅ぐ優しい香り。
出かけて疲れたのか、あっという間に寝てしまった。