100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
とある日、私は父に連れられ久しぶりに城へ来ていた。
城では王妃の誕生祝いが行われ、それは盛大な規模になる。
本来両親が行くはずだったが、母が体調を崩したので私が代理に行くことになった。
祝いの為に催されるものだとしても、まだ未婚の男女が出逢う場として子供が親と列席する事は多々ある。
私は有望な殿方、それも二人から言い寄られている令嬢として社交界では有名となっていた。
そういう場に行けば裏で私を中傷する女性達、物珍しそうに見る人、時々変わり者の殿方が面白半分に声をかけてきたりする。
そんな男性はいつの間にか居たハーディスが排除して回っていたと知ったとき、その後その人達を夜会などで見かけないことが今になると非常に気がかりだ。
城の正門からは多くの馬車が乗り付け、美しく着飾った女性を燕尾服の男性がエスコートし、大広間には多くの人が順々に奥に座る国王と王妃に挨拶をしていた。
ハーディスも同行しているが広間には貴族しか入れず、警備は近衛兵などが行うため執事などは別の控えの間で待機することになっている。
ハーディスはこの城を見て歩きたくは無いのだろうか。
幼い頃にここで出逢ったという記憶は未だに思い出せない。
どんな思いで今までここへ同行していたのかと思うとなんとも言えない気持ちになった。
名前を呼ばれやっと順番になった。
私は鮮やかな青色のドレスのスカートを軽く摘まみ頭を下げ、その横の父が口を開く。
「おめでとうございます」
そう言った父に私も同じ言葉を続ける。
壇上にある二つの椅子には少し冷たそうにも思える王妃と、髭を蓄え眼光の鋭い国王が座り、私達の言葉に王妃はこくりと頷く。
別に雑に扱われているのでは無く、多くの来客に挨拶をしていたら疲れてしまうためにそういう形式を取っているだけだ。
下がろうとしたら何故か国王と目が合う。
今までなら頭をすぐに下げるところだが、ハーディスの話を思い出してじっと見つめてしまった。