100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
「ティアナ」
小声で父に言われ慌てて頭を下げて下がる。
もう次の来客が挨拶をして国王の顔は見えない。
『さっきの国王の目が気になるわ。
もしかしてハーディスから私に出生の事を話したことでも聞いたのかしら。
だとすると未だに国王とはそれなりに親密と言うことになるし』
考え込んでいると父に声をかけられた。
「私は他の方々に挨拶をしてくるよ。
疲れたのだろう?少し夜風に当たってきては」
「そうですね。そうさせて頂きます」
広間にある開け放たれた窓からはバルコニーに出られるが、そこにも男女が一定間隔で談笑している。
こういう場所は出会いの場でもあるし、ただでさえ良い身分の者が揃う以上そうなるのは当然。
私は広間から出て長い廊下を歩く。
そう言えばこちら側には裏庭があったのを思いだし階段を降りた。
外に出られるようにしてあるのか既に開いているドアから外に出れば、階段の下には噴水のある緑豊かな庭園。
柔らかな風が自分の身体を擦るように通って気持ちが良い。
ほ、と息を吐くと後ろから重い靴音がして振り返った。
「ティアナ嬢?」
そこには軍服に腰には剣を挿したカール様が立っていた。
その後ろには若い兵が二人いる。
私を見たカール様は眉間に皺を寄せ、
「今日こちらに来られるのは存じていましたが、城内とはいえお一人での行動はお控え下さい」
「申し訳ありません。
ちょっと人酔いしてしまって風に当たりたかったのです」
申し訳ない気持ちで謝れば、カール様は眉間に皺を寄せたまま後ろの兵に何か言うと、二人は私をチラチラ見ながら去って行った。
「わかりました。しばし俺が護衛をさせていただきます」
「いえ、カール様にご迷惑をかけるわけには。
今から戻りますので」
「先ほどの言葉はお許し下さい。
部下のいる手前、久しぶりにお会いできて嬉しいなどと言うわけにもいかず」
歯切れ悪そうに弁解したカール様を見て思わず吹き出す。
カール様もかなり居心地が悪いのか剣の柄を触っている。
「でしたらお言葉に甘えて」
カール様もホッとしたような顔に、微笑ましい気持ちを出さないよう我慢した。