100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
「カール様、この後は私がお嬢様を広間までお連れしますのでどうぞ仕事にお戻り下さい」
笑みを浮かべるハーディスに、先ほどまで可愛かった大型犬がオオカミのように鋭い目でハーディスに視線を向ける。
「君が三人目の候補者とは。
だが不思議と驚かなかった。
以前から感じていた君への違和感からだろうか、君は隠しているだろう、大きな事を」
「申し訳ありません、カール様にはお話出来ないのです」
「ティアナ嬢には」
「お伝えしていますが信じていただけません」
「なるほど。信じてもらえないほどの内容なのか。興味深いな」
微笑んだまま話すハーディスと、鋭い眼光でまるで詰問するようなカール様。
二人の間にはブリザードが吹きすさぶようで、思わず自分の身体を抱きしめた。
「ティアナ様が寒がっておられるようです。中へお連れしても」
「それは失礼した。
ではティアナ嬢、近いうちに」
カール様は流れるように私の手をハーディスから奪ってキスを落とすと、私に少しだけ笑みを浮かべ振り返ること無く庭園から立ち去った。
逞しい背中を見送ったと、隣に居る執事を睨む。
「いつからいたの」
「お嬢様が広間を出るときからです」
「ずっとじゃない。
話しも聞いていたのね」
「近くに控えていましたので仕方なく耳には届きましたが」
悪びれることも無く言いながら、既に私の手を取ってさすっている。
「寒くないわよ」
「いえ、単に上書き中です。お気になさらず」
「気にするわよ」
私の手を簡単に隠すほどの大きな手。
長い指は私の手をさすると言うよりも味わうように私の肌を滑らせている。
上から変な息づかいが聞こえてきたので、片方の手てハーディスの手の甲をつねった。
「つねり方が甘いです。
もっと、もっと強く!」
「やかましい!ここに捨て置くわよ!!」
一人庭園を進み出すと、ティアナ様と変な息づかい混じりに言うのでぞわぞわと寒気がする。
城の中に入るため庭園から階段を上がろうとすれば、すぐさま回り込んだハーディスが私の手を握る。
「足下お気をつけて」
目の前には輝かしい城。
その前に立つ黒髪の変態執事。
それがこの国の第四王子という訳で。