100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる



また馬に乗り目当ての村に着いたのは昼過ぎだった。
あのむき出しになった山肌にほど近い。
居たる場所で木を切っている村人、木材の小さい物を抱えて運ぶ子供などが居る。
体格、表情、ここの村人は酷く貧しくも追い詰められてもいないようだ。

しかしさっきから村人に見られていて居心地が悪い。
悪意の目を向けられてはいないが、物珍しそうに見ているのはわかる。

着いた場所は二階建ての建物の前で、カール様が先に降りて私を下ろそうとしているときにドアが音を立てて開いた。

「カール様!」

年の頃は50代だろうか。
小柄だが体つきのしっかりした男性が笑顔で出てきた。

「元気そうで何よりだ。
すまないが食事を頼む」

「もちろんです。皆お目にかかれるのを楽しみにしておりました」

カール様が私を地面に下ろし私が彼に頭を下げると、彼は深々と頭を下げた。

「私は以前カール様のお屋敷に勤めていた者です。
このたびは我が店に立ち寄っていただき感謝いたします。
このように質素な店ですが、心をこめておもてなしさせていただきます」

「こちらこそお邪魔します」

中に入ると料理の良い香りが出迎えた。
店は天井が高く、テーブル席が数席とカウンター席があるが誰もいない。

「今日はカール様達の貸し切りにしています。
何せあのカール様が初めて女性とご一緒に来られたのですから」

隣から盛大な咳払いが聞こえる。
私が初めてなのですか?と彼に聞くと彼はカール様の必死のサインを無視して嬉しそうに笑う。

「はい。
カール様は時々この村の様子をわざわざ見に来て下さるのですが、まさか女性を連れてくるので食事を出して欲しいなどという手紙を受け取ったときにはこの店で村の者達と宴会になりまして」

「シド、食事を用意してくれないか」

「失礼しました。すぐご用意しますね」

怒ったようなカール様の声に、シドさんが笑いを堪えるように店の奥に入っていく。
奥からこちらをのぞき見ていた女性や男性はシドさんの家族だろうか。明るい声が聞こえてきた。

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