100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
「ティアナ様!!」
板の上に寝かされていた私はその声に目を開けて顔を上げる。
そこには初めて見る余裕の無い顔のカール様がいた。
「良かったです、ご無事で」
私が安心した顔でそう言うと彼は私の前にしゃがみ、上半身を起こした私の身体を気遣いながらそっと私の両手を取った。
「なんという無茶をなされる。
倒れられたと聞いて俺は」
「もう大丈夫です。ご心配をおかけしました」
カール様は私の手を額に持ってきて、
「貴女の魔法が届いたおかげで限界に来ていた俺の魔法は維持出来たのです。
そうでなければあの場に居て動けない者達が逃げる事も救出する時間も作れなかった」
「一番はすぐに防御し守ったカール様のおかげです。
それで村人に犠牲者は」
私の緊張した声に彼は優しい声で、
「死んだ者はいません。先ほど確認を終えました。
死にそうになっていた者達は歩けるほど回復し、どうやら怪我の程度によって治癒された具合は比例しているようです。
ですが死者も無く、今後仕事を辞めざるを得ない大怪我をした者もいません。
貴女のおかげです」
私はずっと手を握るカール様の手を外し、今度はカール様の手を包む。
「先ほども言いましたが元々はカール様の魔法でその後の土砂崩れを防いだからです。
私は最初どうすべきか悩みました。
ですがカール様の力強い魔法を見て、私も動かねばと力が湧いたのです。
そして」
いつの間にか私達の周りに集まっていた村人をゆっくり見回し、
「何より皆さんが力を貸して下さったおかげです。
ありがとうございます」
そう言って笑みを浮かべると、若い男が、
「俺は木が腕に刺さっていたんだ。
だがお嬢様の魔法のおかげで動くほど治っている。
そもそも俺たちは魔法の使える貴族じゃ無いんだから」
その言葉に周囲の村人も頷いている。
「いいえ。
皆さんにも小さい力はあるのです。
それを私に預けて下さったからこそ出来たこと。
その力は小さくても集まれば強大なものになる。
全ては使い方次第なのです」
私の言葉に皆戸惑ったような顔で見合わせている。
無理も無いだろう、ここにいる人達に実際は魔力は無い。
だが何かの力は皆持っている。
それが集まれば優しさにも憎悪にも変わる。
どう転ぶかはその人達次第だ。