100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
「女の癖に魔法など!
大方その男の貴族の魔法をまるで自分が使ったかのように偽っているのだろう!
信じてはならん!嘘つきな女だぞ!
また神の怒りに触れて死んでも良いのか!」
さっきの老人だ。
目を血走らせて私を指さし叫んでいる。
この世界は貴族が魔法を使うが、一番強い色の魔法を使うのも、各魔法でレベルの高いものを使いこなせるのもほとんどが男性。
だから女がレベルの高い魔法を使うことはありえないと思う者がいるのは知っているけれど、面と向かって指を指されるのは嫌な気分だ。
「貴様、俺の大切な人を愚弄するのか」
冷たい低い声が大きくないのにこの場所に響く。
村人も、そしてその老人もカールの一声にたじろいだ。
「今確かなのはあの山の斜面が土砂崩れを起こし、村人が巻き込まれ多くの負傷者を出したのに皆無事だと言うことだ。
本当は死んでも、もう二度と仕事も出来ない身体になっていただろう者達がここに立っている。
それはお前の言う神がやったことか?
助かった者達は感じただろう、青く、そして温かな力で自分が癒やされたことを。
そしてわかっているはずだ、その魔法を誰が使ったのかも」
最後、優しい声になったカール様が私に少しだけ口角を緩めた。
それを見て私も口を結んで小さく頷く。
こうやって彼が認めてくれている。
それだけで十分だ。
シドさんが私達の側に来て地面に座ると、周囲で立っている村人を見る。
「私はずっとこのお嬢様の側に居ました。
倒れるほどの魔法を使われその美しい青に包まれたとき、この惨状を見て不安に駆られていた心が落ち着いたのです。
間違いなく治癒はお嬢様の魔法の力。
そして再度土砂崩れで飲み込まれそうなのをずっと支えてくれたのはカール様のお力によるもの。
この村を救っていただき、お二人には心より感謝いたします」
地面に着くほど頭を下げたシドさんに私は驚き、頭を上げて下さいと声をかけた。
すると次々に私達の側に村人が寄ってきて、礼を言ってくれる。
その顔は皆喜びに溢れていて、私はそれが嬉しくてカール様の手を握ったまま笑顔で彼を見た。
彼も先ほどの殺気立った態度は消え、私の気持ちを受け止めるように表情は穏やかだ。
だがここで丸く収まりはしなかった。