100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
「本当に出過ぎた真似を」
泣きそうな気持ちで謝ると、
「何も謝る必要などありません。
むしろ俺は貴女に交際を申し込んでいることを誇りにすら思った」
段々と空は綺麗なオレンジ色に染まりだした。
馬車の通るこの道には規則正しい蹄だけ聞こえている。
突然のカール様の言葉に私は恥ずかしさで言葉が出ない。
「どうすれば貴女は俺だけ見てくれるようになるのだろうか」
「え?」
「いや、何でもありません。
屋敷が見えてきましたよ。
良かった、貴女をゆっくりと休ませられる」
カール様の言葉が小さくて聞き取れ無かったけれど、やはり無理をさせたことを気にしておられるようだ。
私の魔法をカール様にだけ全て明らかにしていないのはフェアじゃ無い。
村で魔法を使ったことは両親に報告しなければならないし、その時にどうするか相談しよう。
屋敷の前で小さなランタンを持ちハーディスが立っていた。
どこから帰ってくるのに気付いていたのだろう。
あまりこの執事に普通は通用しないけれど。
「申し訳ない、お送りするのが遅くなってしまった」
馬上からカール様がハーディスに言い、ひらりとカール様は降りて私をゆっくりと馬から下ろした。
私に配慮して走らせてくれたとは言え、こんなに長い時間乗ったのは初めてで太ももとお尻が痛い。
暗い中でもカール様のように強い眼をした彼の愛馬に、
「私も乗せてくれてありがとう。随分疲れたでしょう」
そう言って鼻の横を撫でると、目を細めてこちらにすり寄ってくる。
何とも可愛くて頬が緩みながら擦った。
「こいつもティアナ嬢が好きなようです」
「嬉しいです。動物に好かれるのは」
嬉しくて素直にそう返すと、カール様の表情が固まり、はい、と微妙な顔で返事をされた。
その横ではハーディスが顔を背け肩をふるわせている。