100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
土や砂まみれになっていた髪や身体を洗い、ほっと部屋の大きな椅子でくつろいでいるとノックと供にハーディスが入ってきた。
「どうぞ。お疲れになったでしょう。
飲んだ後は身体の隅から隅までマッサージ致しますよ」
「飲み物だけで良いわ」
グラスに入ったジュースだけ飲んでいると足下から良い香りがする。
私の足の前には、白い手袋を外したその手に何か液体を伸ばしているハーディスがいた。
「何をする気なの」
「こちら、やっと手に入ったローズオイルです。
なんとローズ100%!
お肌も心も艶々に。
きっと貴女の心の中にある迷いも解きほぐすでしょう」
「どこかの妖しげな物売りそのものね」
だけど最後の言葉で私は抵抗を止めた。
それがわかっていたかのようにに、私のふくらはぎにゆっくりとオイルをのせていく。
既にハーディスが温めていたのか肌に乗せられ、よりローズの香りが立ち上って本当に良い香りだ。
「どこまで知っているの」
ハーディスはゆっくりと私の前に跪いたまま右足のふくらはぎをマッサージしている。
顔もこちらに上げず、
「全てでございます。
あそこで魔法を使われるとは無茶をしましたね」
どうやってついてきたのか。馬もいなかったのに。
「魔法を使うのは流石に悩んだわよ。
でもディオンとカール様の存在が後押ししてくれたの。
あそこで村人達が多くなくなって、生贄なんて馬鹿な真似をしだすのも嫌だったし。
どうせ呆れているんでしょ?身勝手だって」
ぐっと椅子の背にもたれかかり上を見る。
未だに私の足を痛くも無く適度な力でハーディスはマッサージをしていた。
「呆れてなどいませんよ。
それでこそ気高い貴女です」
何となく妙な感じがして足下を見ると、ハーディスの髪がとても長くなっている。
肩幅もぐんと大きくて、思わず目をこすって再度見るといつもの執事がそこにいた。
「どうしました?」
「なんかハーディスの髪が長く見えて」
きょと、としたハーディスが口角を上げた。
何だか危険信号が自分の中で点滅する。