100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる

国王の顔は整っているよりも迫力がある。
髭に目が鋭いのはとても上に立つ者としての威厳を感じる。
それに比べハーディスは男っぽいと言うより綺麗な顔立ちだろう。
おそらく母親似なのだろうか。
いや、今はそんな事を考える時では無い。

ハーディスはいくら私の執事とはいえ、ここの場に来て味わうのはハーディスをあくまで王子として扱っていることだ。
私こそメイドのようにしか見られていない気がするしそうなのだろう。
だからまずは黙っているしか無い。

「遮断処理は済んでいるがそう日にちは持つまい。
村と村との往来を止めればそれだけで噂は広がる。
早い内に村人の記憶を消すべきだろう」

低い声で話す国王の内容を聞いて、驚きながら必死に考える。

ハーディスが国王に私が魔法を使った事を報告、すぐに誰か魔法の使える者があの村の出入りが出来ないようにさせていて、村人の記憶を消すのか。

「記憶を消す?!」

冷静に聞いていたがその結論に思わず声に出し、口を手で押さえる。
国王の話した言葉になんて事を。

「申し訳ございません!」

私が焦って謝ると、ギロ、と国王の鋭い目が自分に刺さって身体を強ばらせる。

「ここは私が説明致しましょう」

柔らかい声で入ってきたのは侯爵だった。
私はオロオロしそうな気持ちを我慢して侯爵の方を向く。

「現在あの村は城の優秀な魔法使いにより結界が張られており、村の者は外に出られず外の者は村には入れません。
それはティアナ様、貴女の魔法を見た村人達がその情報を外に漏らさないため必要な方法です。
もちろん、村の修復や治療をするための者達は村に派遣済みです。

そしてすぐに彼らから記憶を消さなければなりません、貴女があの大規模な魔法を使ったことを」

伯爵の表情は微笑んでいるようで何も優しくは無かった。
緊急事態、それも記憶を消すほどのことを私が引き起こした。
だが事の重大さとともに、記憶を消せる魔法がある事を初めて知った。

ハーディスをちらりとみると、何故か笑顔のまま。
まだ何も言う気は無いのだろうか。

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