100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる

「ハーディスはお前を選んだ」

不意に投げかけられた国王からの言葉。
その言葉の意味をどう取れば良いのかわからない。

王子という立場を捨てて執事となった事?
それとも私に求婚していること?

「そんな事の前に、ハーディスはお前のためだけに魔法を使うという縛りをかけた。
それは魔法を使う、それも王族の血を濃く継ぐハーディスがするのは重さが違う」

「おやめ下さい」

ハーディスが珍しく鋭い声を出した。

国王は何て言ったの?
縛り?魔法?
そもそもハーディスが魔法を使った所なんて見たことは無い。
ハーディスが王子ということはそれなりの魔法を使えて当然なのに。

いや、先ほど伯爵は言った。
記憶を消す魔法を使うのはハーディスだと。

先ほどから混乱して話して貰ったことが抜けてしまう。

私には本来の魔法を使った覚えは無い。
それがハーディスにより記憶を消されていたのだとしたら。
先ほど国王は言われた。
ハーディスは私のためにしか魔法を使わないのだと。

あぁ、なんて馬鹿な私。
ようやくわかった。

「ハーディス、私はこの城で本来の魔法を使い貴方がその記憶を消した。
私が治癒した人々と供に私の記憶も。そうなのね?」

ハーディスは黙っている。
だがしばらくして、えぇと言った。

何故よ、となじりそうな気持ちをグッと抑える。

「だから私は貴方の魔法を知らない。
縛りをかけてるって何?
そもそも貴方の魔法の色はなんなの?
記憶を消す魔法なんて聞いたことが無いのに」

国王がいるのも忘れ矢継ぎ早に言えば、ハーディスは困ったように眉を下げている。

「王子、流石に私から話してもよろしいですか?
思い出の場所でと言うお気持ちもわかりますが、国王の王子への心痛もおわかり下さい。
ティアナ様も知る権利はあるのでは?」

終始柔らかい笑みの伯爵に、ハーディスが、ではそのようにと珍しく折れた。

戸惑う私は黙ったままの国王に視線を向けた後、斜め後ろに控える伯爵を緊張しながら話すのを待つ。
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