100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる

「アウイナイト家はご存じのように青紫の魔法を使い、そのレベルは国一。
ですがまれに黒の魔法を使う者が生まれます」

黒の魔法?!
そんな色の魔法があるなんて初耳だ。

「黒の魔法は代々恐れられてきました。
王族でも生まれれば扱いに困るほどに。
何故なら、人の記憶を消すことや改ざんすることが出来るからです」

隣に居るハーディスの方を向けない。
いま、彼はどんな顔をしているのだろう。

人の記憶を消すことだって凄い魔法なのに、改ざんまで出来る、そんなことをしたらその人自身を消し去るも同然。
そんな魔法、使える者自体恐れられて当然だ。

「ティアナ様は幼い頃、何度かお父上のアイオライト公爵に連れられこの城に来たのですが、そこで王子と知り合い、二人はとても仲睦まじく中庭で遊ばれていました。

ですがそんなある日、悲劇は起きました」

「伯爵」

ごくりと喉が鳴る。
先を聞くのが怖いと思ったとき、ハーディスが止めるように伯爵に声をかけた。

「良い。先を話せ」

話すことを国王が許した。
こうなるとハーディスは止められないだろう。

聞きたい。でも怖い。
私の手は未だハーディスの手に包まれている。
それがとても心強い。

「まだその頃、この国でもそれなりに戦いは起きていました。
国王は即位してまもなく、反発する者達もそれなりにおり、そんな者達に手引きされた敵国の者達が城に侵入したのです。

その者達は城の兵と戦いになり、お二人の遊んでいた庭にも侵入してきました。
その時ティアナ様は王子を庇われ、そんなお二人を守る為に護衛の者達は敵と戦った。
戦いが終わると城内には負傷兵達が多く倒れているのを見たティアナ様は初めて魔法を使われたのです。
私もあの温かな青に染まった世界を未だに覚えています」

伯爵は静かに、物語を語るように話す。
私の手は小さく震えていて、その手をぎゅっと大きな手が握る。
その手の主の方に未だ私は顔を向けられない。
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