100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる


「多くの負傷兵が敵味方関係無くその魔法により救われました。
ですが、お二人を護衛していた一人の兵士は既に亡くなっていて貴女の魔法は効かなかった。
ショックを受けた貴女を救うため、王子は記憶を消す魔法を使いました。
やはり貴女のように広範囲に。
魔法は広範囲、そして対象人数が多いほど能力が高い。
お二人の魔法の強さは脅威になる、国王自ら判断されました。

敵兵には記憶を消すだけでなく王子は記憶を改ざんし、我が国の兵士であったことにしたのです。
そうしなければ彼らが無傷で訳もなく国に戻れば何があったか詮索されますし、彼らも消されるでしょう。
けしかけた者達も、襲ってきた国も、強襲させた兵はどうなりましたかなどこちらに問い合わせることもありませんし」

話を聞いていても何一つ思い出せない。
だが国王や伯爵は記憶を消されたり改ざんされなかったのだろうか。

そしてあまりにショックな話に現実感も無い。
もしかして私が庇ったというだけで、ハーディスは責任を感じてしまったのかわからない。

「ハーディスは私が庇ったというだけで、ハーディスは責任を感じて王子の地位を捨てて執事になったの?」

自分でも声に覇気が無いのがわかる。
意を決して隣を向けば、ハーディスは優しく私に微笑んで手を握り返した。

「先ほど話があったように私は黒の魔法を使うことでこの城では肩身が狭かったのです。
あの頃は少々捻くれた子供でして、お嬢様が屈託無く接していただいたのはとても嬉しかった。
そんな折りにあんな事件に巻き込んで、あまつさえ助けられるなど。
ですから誓ったのです。
私の全てを捧げようと」

ものすっごく綺麗な顔で言い放ったけれど、いくら何でも結論が飛びすぎる。
庇ったと言うけれど子供のしたことなどたかがしれているし、そもそも守ったのは護衛の者達なのに。

与えられる知らない事実と、いきなり途中飛んで重い愛を押しつけられて頬が引きつる。
私の手はいつの間にかどちらもハーディスの手に包まれ、誓い合うように迫られてきていた。

咳払いが聞こえて、伯爵が苦笑いをしながら私達を見ていた。
隣から小さく舌打ちが聞こえたのは気のせいだろう。
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