100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
「ほーら、お嬢ちゃんが困惑してますよ。
それに自分が全て悪いみたいな言い方、わざわざしなくても」
「事実だろう」
「本来50回の生贄で消える娘を自分の手元に置くためだけに、色々と我が侭を通した人が良く言いますよねー。
あ、やっぱり元凶かぁ。
全部知られたら嫌われますよ?」
フォローしようと思ったんですけどね、失敗失敗とからから笑う男に、ハーディスの代わりになった男が呆れた視線を投げた。
「どうだ?
もう我のところに来るか?
面倒だろう、この世界は」
「面倒って」
私は信じられないという声で言葉を繰り返す。
「現に面倒だろう?
お前は何度も似たような世界で苦しい思いをし、またここでも結局は心を痛めているでは無いか。
お前の望みがあるからこの世界を与えたのに、他のことばかり気にしている。
楽しんでいないのならいらないだろう。
元々次は我のものになるのだ。
何を待つ必要がある」
堂々と、何の疑問も湧かずに男は言っている。
呆然とそれを聞いていて、隣では若い男が顔に手を当ててあーあ、と言ってため息をついた。
確かに私は101回目の転生で色々な事を望んだ。
現に素敵な殿方達に熱いアプローチをうけ、その度にドキドキしている。
なのに頭に浮かぶのは、胡散臭い笑みを浮かべる私の執事。
胡散臭い笑みにいつもお決まりのような愛の言葉。
だが何だかんだ言ったってもずっと側で守ってくれていた男の顔が浮かぶ。
今、私が心から会いたいのはハーディスだけだ。
私は意を決して口を開こうとした。
ハーディスを器とする男が私の肩越しに城を見ている。
「ヤバそうっすね」
若い男が軽口では無く言ったが、男は特に興味も無いようだ。
一体何が起きているのだろう。