100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
「そんな熱い目を向け続けられると理性が崩壊すると何度言えば」
「崩壊するとどうなる訳?」
いつものふざけたような演技をするハーディスにそういうと、ハーディスはきょとんとしたあと、にっこりと笑う。
「それはもう私を選んで下さったと言うことで良いのですよね?」
「そんなこと言ってないわよね?」
「理性が崩壊することをティアナ様がお望みなわけですから」
「望んでない。単にどうなるか聞いただけ」
ずいずい迫ってくる、顔だけは良い男が。
私はそれに動じること無く無表情で返せば、すぐ目の前にあるハーディスの口角が上がった。
私の前に軽やかにハーディスが跪き、私の手を取る。
その手の甲にキスをすると跪いたまま私を見上げた。
「私は貴女だけがいればいいと思っています。
貴女がいるなら他のことなどどうでも良い。
それが私を操る男の思いによるものだけだなどとは思っていません。
貴女は言ってみれば私とその中の男二人を夢中にさせている、ただそれだけなのです」
重たい告白だが、ハーディスは例の男を受け入れたのだろうか。
だからこそ二人、なんて言い方をしているのだろう。
「ハーディス」
「はい」
私は再度手を差し出す。
「この世界で何があっても側にいると誓える?」
ハーディスはふわりと柔らかい笑みを浮かべ、再度手の甲に、そして指に音を立てながらキスを落としていく。
「くすぐったいからやめて」
「お断りします。私の愛を疑った罰です。
もっとハードなのにしたいのをこんな可愛いレベルにしているんですから感謝して頂きたいですね」
「よくわからない逆ギレだけど好きにして」
その言葉にハーディスが立ち上がり、私の椅子の背もたれに片手を置く。
さっきまで見下ろしていたはずが、あっという間に見上げることになっていた。
なにを、と口を開く前に、私のおでこに口づけをした。
思わず驚いてすぐ目の前にある胸板を両手で突き飛ばすがハーディスはよろめくこともなく、私を包み込むように見下ろす。
「愛しています。
貴女が願ったこの世界を楽しんで生きて貰うためなら私は何だって」
そこで言葉が途切れると、再度おでこにキスをされた。
離れていくハーディスの顔は何故か少しだけ切なげに見える。
「さぁ寝ましょう」
私はその後ハーディスに何も言えず、言われるがまま就寝した。