100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる



カール様からも間を置かずして手紙が届いた。
こちらは任務で遠方にしばらく出かけるために誘いを断った、とあった。
エリス嬢との話は事務的な数行で、むしろこれから行く場所のことや帰ってきたらまた連れて行きたい場所があるなどそれが遠回しに書いてあって、読むと頬が自然と緩んでしまう。

エリス嬢のお茶会はお父様にも渋られたがこれも令嬢として必要な仕事だ。
断れば相手が相手、何を吹聴されるかわからない。

そんなお茶会はあっという間にやってきた。


「ようこそティアナ様」

「初めましてエリス様、お招き頂き光栄です」

カーネリアン公爵家につくとメイド達が出迎え明るい部屋へ案内される。
豪華な屋敷に不釣り合いなほど、その部屋に用意されたテーブルセットは質素だ。
花も置いておらず、簡単なテーブルクロスが敷かれているもののとても高価な物には見えない。

なんというか、あからさまに歓迎されていないのがありありと伝わるわね。

そんなことを思いながら付き添っているハーディスにちらりと視線を向ける。
笑顔だがこの笑顔は怒りを抑え込んでいることくらい、長年の付き合いでわかっていた。

部屋で出迎えたのはエリス嬢。
切れ長のつり目に朱に近いような赤髪。
ウェーブをかけているというより、元々の地毛がくせ毛なのだろう。
堅そうに思えるその髪は、まるで彼女の性格を彷彿とさせた。

彼女はにこりと笑い、私達に席を勧める。
ハーディスは断って私の近くで見守るように、いや完全に臨戦態勢を維持したまま立っていた。

「急なお誘い、さぞ驚かれたことでしょう」

「はい」

エリス嬢がしっかりとした声で話しかければ、メイド達が黙々とテーブルにお茶菓子や紅茶を用意する。
お茶菓子があまりに質素すぎて、段々この家は財政的に厳しいのでは?という心配がもたげてきた。
すると彼女は、ふふふと口元に手を当てて笑う。

「お恥ずかしい、もう気付かれていますよね。
我が家は位と立派な屋敷を持ってはいるのですが家計は芳しくなく。
領地の作物が不作だったのでそれが一番影響しております」

確かカーネリアン公爵家の領地はあの土砂崩れの起きた村に近い。
雨が多く農作物が育ちにくかったのだろう。
我が家は領地だけで無く他の商売による収益で上手くやれている。
リスクは分散させておくべき、そんなお父様の考え方は非常に頭が良い。
だからこそ国王からの信頼も厚いのだ。

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