100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる
降りたのはシンプルな庭園。
噴水などは無いのだが、草花がそれなりに手入れされているのはわかる。
だが手入れする量を減らしたいのか、花壇などは土だけで何も無い場所もあった。
エリス嬢に案内されながらゆっくりと歩く。
後ろにはエリス嬢の執事とハーディスが距離を取ってついてきていた。
「うちは庭師も一人しか雇えないので」
私の心を見透かすようにエリス嬢が言うので、穏やかで落ち着きますと答えると彼女はにこりと笑った。
「率直にお話ししますと我が家は位だけでお金が無いのです。
ですのでうちが差し上げられるのは立場くらいのみ。
それを考えあのお二人にお声がけを致しました」
笑顔のままで彼女は唐突に宣言した。
この話をしたいが為の誘いだったのだろう。
我が家を実際見てもらえればわかるでしょう、貴女の家とは違うのよ、というのを先ほどから裏で言われ続けているのはわかっていた。
「もうおわかりだとおもいますが、あのお二人のどちらか、私に譲って頂けませんか?」
目を細めてそんなことを言った彼女に苛立ちを感じてしまう。
「譲るも何もあのお二人が有り難いことに申し出て下さったことで、私がどうこう出来るお話ではありません」
「ですのでどちらかに決めて頂ければ残った方を私が頂きたいと言っているのですが」
「残った方などと。
確かにお二人の好意に甘え時間を頂いている状態ですが、まだ」
「そうやって振り回すなんて思ったより悪い女性ですのね。
殿方というのは狩るのがお好きですから、そうやって逃げ回る方が喜ばれるのでしょうし」
とんでもない言葉に言葉が出せない。
さっきから向けられているのは悪意だ。
だが二人の優しさに甘えて待たせているのも事実なので後ろめたい気持ちから次の言葉が出てこない。
「ティアナ様が社交界では何と呼ばれているのかご存じですわよね」
そういう場で私のことを悪く言う人々がいるのはもちろん知っている。