100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる


ぐっと堪えて背筋を伸ばし笑顔を作る。

「エリス様、もうこれでこちらに私を呼ばれた要件は済みましたでしょうか。
私は何のお役にも立てません。
お二人に思いを伝えたいのでしたら正々堂々としていただければ」

エリス様は一瞬不愉快そうな表情をしたが、すぐに切り替えて、

「わかりました。
でもティアナ様とお近づきになりたかったのも本当なのです。
もう帰られるのは寂しくもありますが」

急に被害者ぶられて苛立ちそうになる。
お友達になりたかったのに攻撃は時折ある。
だが彼女にその気が無いくらい私でもわかるし、きっと周囲には親しくなりたかったのにティアナ様は早々に帰ってしまったと嘆いて回るのだろう。
こればかりはどうしようもない。

「よろしければ今度は我が家へ。お好きなお菓子を用意しておきます」

「嬉しいですわ。アイオライト家ならどんなお菓子でも用意できますでしょうから」

一言多いな!
苛立ちの限界に達しそうなのを必死に抑え、私達は屋敷に戻る。
エリス様の執事がエリス様の手を取り中に入るその後ろを私達が続く。
マナーも何も無いな、とため息をつきそうなのをハーディスがそっと、もう少しの我慢ですと耳打ちしてきた。
まぁそうだと苦笑いで返した時、ハーディスが私の肩を強く抱いて引き寄せた。

「なに」

言葉を言い切る前に私がいたはずの場所を、恐ろしい形相をした男が突っ切った。
聞き取れ無い言葉を喚きながら大きな鎌を何度も振り下ろし、その標的はエリス様だとわかる。
庇った執事は切られてうずくまり、体勢を崩した男は再度立て直し鎌を持つ。

目の前に見えている光景は驚くほどにゆっくりに見えた。
ドアでは無く外の窓に背中をつけたまま、呆然と立ち尽くしているエリス様に男が走って行く。

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